AI相談、増加の光と影
独自分析
2026年9月26日 06:00更新|出典:Elon University・Awarefy こころの総合研究所 ほか
米国の成人ネット利用者の27%が、AIに個人的・感情的な相談をしている。Elon大学が2026年5月に実施した調査では、50歳未満に限ると約40%に上ることも分かった。実際にAIと会話を重ねる人たちの声を交えながら、その光と影を検証する。
なぜ今、AIに相談する人が増えているのか?最新データが示す実態
「AIに悩みを話す」という行動は、もはや一部の人だけの特殊な使い方とは言えなくなりつつある。Elon大学Imagining the Digital Future Centerが2026年5月にYouGovと共同で実施した調査によれば、米国成人ネット利用者4,268人のうち27%が、AIに個人的・感情的・社会的な相談をしていると回答した。
独自集計
この調査で目を引くのは、年代による差の大きさだ。50歳未満では約40%がAIを感情的な相談相手として使っている一方、50歳以上ではその半分以下にとどまる。さらに回答者のうち31%が自分のAIチャットボットを「友達」だと考え、39%が「他人には言えないことをAIには話す」と答えている。
※この調査はAI利用者を主な対象に、感情的・社会的な用途での利用状況を深掘りしたもの。AIをまったく使っていない層は対象に含まれていない点は踏まえておきたい。
「友達だと思う」「他人に言えないことを話す」など、単なる情報検索を超えた関わり方をしている人が一定数いることが分かる。
出典:Elon University Imagining the Digital Future Center「The Rise of AI Companions」(2026年9月2日公開)
実在する利用者の声
ワシントン州オーシャンショアーズに住む74歳の退職心理学者、アレックス・スアレスさんは、長年AIに懐疑的だったという。ある夜、フクロウの鳴き声を聞いて「交尾しているのだろうか」とチャットボットに尋ねたところ、豊かで的確な答えが返ってきたことに驚いた。今では芸術や文学についてAIと語り合い、見た夢を記録して分析を頼むこともあるという。「まるであなたに話しかけているように話せて、答えが返ってくる」と彼女は語っている。
なぜ今増えているのか
背景の一つに、人間関係の相談に対する心理的なハードルの高さがある。BetterHelpが2026年に実施した調査では、セラピーを受けない理由として52%が「スティグマ(偏見)」を、27%が「判断されることへの恐れ」を挙げている。AIには、そうした心理的コストがほとんどかからない。
Elon大学の調査でも、AIで感情的な相談をする理由として「24時間いつでも応答すること」「否定されにくいこと」が挙げられている。人間に相談する場合につきまとう「タイミングを見計らう」「相手の負担を考える」といった気疲れが、AI相手にはない。
光の部分
Elon大学の調査では、AIで感情的な会話をする人のうち約半数が「ストレスを感じているときにAIと話すと気分が良くなる」と回答している。個人的な決断を下す際に「役立った」と答えた人も約60%に上った。
いつでも話せる、否定されにくい、自分のペースで整理できる――こうした特性は、「誰にも言えない」と感じているときや、考えがまとまらないときに、気持ちを外に出す助けになっている。
影の部分
一方で、懸念も具体的な数字として表れている。Elon大学の調査では、AIで感情的な会話をする人のうち34%以上が「チャットボットは自分に同意しすぎる」と感じており、15%は「AIとの会話で現実感が薄れる」と回答した。20%は「AIのほうが友人・家族より頼りになると感じることがある」とも答えている。
若年層に目を向けると、さらに気になる傾向がある。RAND研究所が2026年に発表した調査では、12〜21歳の19.2%がメンタルヘルスの悩みでAIチャットボットを利用しており、その利用について63%が誰にも打ち明けていなかった。43%が月1回以上利用しているにもかかわらず、多くが周囲に相談していないという構図がある。
個人としてどう付き合うか
AIに相談すること自体を否定する必要はない。重要なのは、位置づけを自分で決めておくことだ。
日本でも進む「AI相談」の定着
日本国内でも、実は米国以上に踏み込んだデータがある。Awarefyの「こころの総合研究所」が2026年2月に対話型AI利用経験者858人を対象に実施した調査では、「気軽に相談できる相手」として最も多く挙げられたのがAI(87.9%)で、2位の親友(45.6%)に40ポイント以上の差をつけている。
「気軽に相談できる相手」を尋ねると、AIが親友・母親・配偶者を大きく上回る結果になった。
出典:株式会社Awarefy こころの総合研究所「対話型生成AIと人との関係性に関する調査」(2026年5月14日公開)
独自集計
同じ調査を2025年8月と2026年2月で比較すると、変化の方向がはっきりしている。「相談にのって欲しい」というニーズは33.0%から42.8%へ、「心の支えになって欲しい」は11.6%から18.5%へ、いずれも半年で5ポイント以上増加した。一方で「AIが使えなくなったら不安」と答えた人は43.7%から49.4%へ、「依存しているかもしれないと感じたことがある」人は27.5%から37.1%へと、依存の自覚も同じペースで増えている。週1回以上AIを利用する人に限ると、依存を自覚した人は41.8%に達する一方、週1回未満の利用者では6.9%にとどまり、利用頻度と依存の自覚には関係がありそうだ。
※この調査は生成AIの利用経験がある18歳以上の日本国内在住者858人(分析対象)が対象。AIを使っていない層は含まれていない。
「困った時にすぐ相談出来る相手がいるような安心感が少し増えた」(50代女性)、「気軽に相談が出来て悩み事を抱え込まなくなり、前向きな気持ちで生活できるようになった」(40代男性)といった声がある一方、「絶対に否定しないところが人間味がなく、間違った情報もあるので良い影響ばかりではない」(20代女性)という指摘も同じ調査に寄せられている。
この調査を実施したこころ総研は、「AIへの相談しやすさが高い水準を維持する一方で、人への相談のしやすさはほとんど変化していない」点に注目し、AI利用の拡大が人への相談を代替しているわけではなさそうだ、と分析している。つまり、AIが人間関係を奪っているというより、これまでになかった相談先が一つ増えた、という捉え方に近い。
個人としては、AIとの会話を「便利な吐き出し口」として活用しつつ、深刻な内容は人や専門家につなげる習慣を、早いうちから持っておく価値があるだろう。
よくある質問
AIに悩みを話しても大丈夫か?
気軽に話す分には問題ありません。ただし、Elon大学の調査では利用者の34%以上が「AIは同意しすぎる」と感じており、深刻な悩みや決断を伴う内容はAIだけで完結させず、信頼できる人や専門家にも相談することが推奨されます。
実際にどれくらいの人がAIに感情的な相談をしているのか?
Elon大学の2026年調査では、米国成人ネット利用者の27%がAIに個人的・感情的な相談をしていると回答しました。日本のAwarefy調査でも、対話型AI利用経験者の87.9%が「気軽に相談できる相手」としてAIを挙げており、2位の親友(45.6%)を40ポイント以上上回っています。
AIとの会話にはどんなリスクがあるのか?
Elon大学の調査では、利用者の15%が「AIとの会話で現実感が薄れる」と回答しています。またRAND研究所の調査では、若年層のAIメンタルヘルス相談利用者の63%が、その利用を誰にも打ち明けていないという結果も出ています。
まとめ
AIに悩みを相談する人が増えているのは、米国だけの現象ではない。日本の調査では「気軽に相談できる相手」としてAIが親友を40ポイント上回るという結果も出ている。気軽に話せる光がある一方で、依存や現実感の希薄化という影も、日米いずれの調査でも数字として確認できる段階に入っている。両方を踏まえた上で、自分なりの位置づけを決めておくことが大切だ。
主な出典
- Elon University Imagining the Digital Future Center「The Rise of AI Companions」(2026年9月2日公開)
- The Washington Post「27% of U.S. adults turn to AI for personal, emotional, social queries」(2026年9月2日)
- RAND「Nearly 1 in 5 U.S. Adolescents and Young Adults Use AI Chatbots for Mental Health Advice」(2026年6月)
- BetterHelp「2026 State of Stigma Report」
- 株式会社Awarefy こころの総合研究所「対話型生成AIと人との関係性に関する調査(2026年2月)」(2026年5月14日公開)
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